くる病・骨軟化症と間違われやすい疾患、似た疾患
「くる病・骨軟化症の診断マニュアル1)」(日本内分泌学会と日本骨代謝学会が合同作成)には、くる病・骨軟化症と鑑別(疾患を絞り込むこと)を要する疾患、混同されやすい疾患が紹介されています。
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鑑別を要する疾患、混同されやすい疾患
- 低骨密度:骨粗鬆症、腎性骨異栄養症など
- 骨変形:骨系統疾患
- 骨痛:リウマチ性多発筋痛症、強直性脊椎炎など
- 筋力低下:神経・筋疾患
- 骨シンチグラフィーでの多発取り込み:骨転移
- くる病様骨変化:低ホスファターゼ症
福本誠二,ほか.日本内分泌学会雑誌 2015;91(Suppl):1-11より引用
誤って他の疾患に診断されてしまうと、適切な治療が受けられないため、症状はよくならず生活の質(Quality of Life:QOL)は改善されません。また治療が遅れることで、身長の伸びの改善(くる病の場合)や痛みの軽減・骨折治癒率の改善(骨軟化症の場合)などにも影響が出てきます。
適切な治療を受けるためには早期診断が欠かせないため、他の疾患との鑑別が重要です。
くる病・骨軟化症の診断方法については、「くる病・骨軟化症の診断」をご覧ください。
くる病と間違われやすい疾患・似た疾患
くる病はレントゲン検査で特徴的な所見が認められることもあり、歩き方が不安定あるいは違和感がある、また、O脚やX脚といった骨変形などの臨床症状や血液検査(血中のリンやカルシウムなどの値を調べる)と併せて、比較的診断がつきやすい疾患とされています。レントゲン所見、骨変形は骨系統疾患の一部と似ているため、血液検査を含めて診断する必要があります。
骨軟化症と間違われやすい疾患・似た疾患
骨軟化症の主な症状は骨の痛みや筋力低下などであり、これらは疾患に特異的なものではありません。症状と骨軟化症が結びつきにくいことでなかなか診断がつかず、異なる疾患として診断されることがしばしばみられます。
また、腫瘍性骨軟化症(TIO*)の患者さんでは、約6~7割の患者さんで初診時に別の疾患名で診断されていたという報告があり2)-3)、その主なものは、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎関節炎、骨粗鬆症、慢性関節リウマチでした。これらの疾患では、以下のような症状が認められていました。
* TIO:tumor-induced osteomalaciaの略称
- 椎間板ヘルニア:腰や背中、下肢の痛み
- 脊椎関節炎:腰や背中に加えて骨盤の痛み
- 骨粗鬆症:骨痛や骨折、身長の縮みなど
またその他には、以下のケースもみられます。
- 強直性脊椎炎や線維筋痛症、偽痛風などといった疾患と誤診
- 骨軟化症による大腿骨頭の軟骨下脆弱性骨折が大腿骨頭壊死と誤診
- X染色体連鎖性低リン血症性骨軟化症の股関節の骨棘形成による疼痛が変形性股関節症と診断
- 足の中足骨の偽骨折(骨を横断しない骨折)による疼痛が足底筋膜炎と診断
さらには、X染色体連鎖性低リン血症性骨軟化症では疼痛を伴う前縦/後縦/黄色靭帯骨化症を合併しやすいことが知られています。前縦/後縦/黄色靭帯骨化症のみが診断されている場合も少なからずあります。
いずれも、症状だけでは骨軟化症との鑑別は容易ではありません。これらの疾患と鑑別する上で大切なのは、血中のリンの値です。血液検査が行われる場合には、リンの値も測定してもらうと、正しい診断の役に立つ場合があります。
1)一般社団法人 日本骨代謝学会HP|ガイドライン くる病・骨軟化症の診断マニュアル(2015年)(最終閲覧日:2020年4月30日)
http://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/ricketsmanual2015.pdf(PDFファイル)
2) 古家美菜絵, 小林寛, 伊東伸朗. FGF23過剰症の運動器障害. 整形・災害外科. 2017; 60(13): 1599-1608.
3) Feng J,et al.Endocr J 2017;64(7):675-683
この記事の監修ドクター
長谷川 行洋先生
- 東京都立小児総合医療センター 内分泌・代謝科 医師
- 多摩北部医療センター 小児科 医師
伊東 伸朗先生
- 東京大学医学部大学院医学系研究科 難治性骨疾患治療開発講座 特任准教授(研究室HP)
- 東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター 副センター長