くる病・骨軟化症の診断

くる病・骨軟化症の診断

くる病・骨軟化症の診断は、臨床症状やレントゲンなどの画像検査、血液検査(血中のリンやカルシウムなどの値を調べる)の結果によって総合的に行われます1)。 そして、くる病・骨軟化症と診断が確定した後、治療法を決めるため、くる病・骨軟化症の原因を調べていきます1)

くる病・骨軟化症の3つの原因と疾患

まずは「くる病・骨軟化症」なのか診断する

症状の確認

くる病の場合はO脚やX脚といった骨変形や歩き方が不安定あるいは他の子と異なる、また、背骨の湾曲わんきょく(背骨が曲がること)、低身長などが、骨軟化症では骨の痛みや筋力低下が認められるか確認します。

血液検査

血液検査

くる病・骨軟化症では、血中のアルカリホスフォターゼという酵素の値が高くなり(高アルカリホスフォターゼ血症)、リンの値が低くなります(低リン血症)。また、くる病・骨軟化症の原因にもよりますが、低カルシウム血症が同時に認められることがあります。

※「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」

骨軟化症では、自覚症状が整形外科領域の他の疾患と似ているため、骨粗鬆症や強直性脊椎炎、脊柱管狭窄症、慢性関節リウマチ、線維筋痛症などと間違われ、正しく診断されるまでに時間がかかることがあります。他の疾患と鑑別(疾患を絞り込むこと)する上で、血中のリンの値を測定することは非常に重要です。リンの値は食事によって変わりますので、血液検査をする際は、医療者の指示に従って、食事を抜いた状態で複数回の採血を行い慢性の低リン血症を確認しましょう。

骨の画像検査

単純X線検査(レントゲン検査)

くる病・骨軟化症の診断には、単純X線検査(レントゲン検査)が行われます。X線画像の特徴として、くる病の場合には骨幹端の杯状陥凹はいじょうかんおう(骨の中央部と端の間がコップ上に窪む)、成長軟骨帯(骨端線)の拡大や毛羽立ちなどが認められます(図1)。骨軟化症の場合には大腿骨や脛骨、腓骨の骨幹端、骨盤骨などのLooser’s zone(偽骨折[骨を横断しない骨折]の所見)が認められることがあります。

また、骨シンチグラフィーと呼ばれる画像検査も有用です。この検査では、目印となる放射性物質を体内に注射して、その物質がどこに取り込まれたか特別なカメラで撮影して調べます。骨軟化症の場合、肋骨の偽骨折を表す数珠上の取り込み画像や、大腿骨や脛骨、腓骨の骨幹端、中足骨の偽骨折部位などへの取り込みがみられます。

単純X線検査(レントゲン検査) 単純X線検査(レントゲン検査)

図1:X線でのくる病の所見と模式図(東京都立小児総合医療センター 内分泌・代謝科 医師、多摩北部医療センター 小児科 医師 長谷川行洋先生 低リン血性くる病『たのしく学ぶ小児内分泌』診断と治療社,2015年,p207より許諾を得て転載)

くる病・骨軟化症と間違われやすい疾患・似た疾患

くる病・骨軟化症の診断マニュアル

日本内分泌学会・日本骨代謝学会という2つの医学系学会より「くる病・骨軟化症の診断マニュアル2)」が公表されていて、その診断指針は以下の通りです。

(ただし骨軟化症では実際には骨密度が低下していない症例も多く認めます)

くる病・骨軟化症の診療指針

●くる病

大項目
a) 単純 X 線像でのくる病変化(骨幹端の杯状陥凹、または骨端線の拡大や毛羽立ち)
b) 高アルカリホスファターゼ血症*

小項目
c) 低リン血症*、または低カルシウム血症*
d) 臨床症状
O 脚・X 脚などの骨変形、脊柱の弯曲、頭蓋癆、大泉門の開離、肋骨念珠、関節腫脹のいずれか

*年齢に応じた基準値を用いて判断する。

1) くる病
大項目 2 つと小項目の 2 つをみたすもの
2) くる病の疑い
大項目 2 つと小項目の 2 つのうち 1 つをみたすもの

●骨軟化症**

大項目
a) 低リン血症、または低カルシウム血症
b) 高骨型アルカリホスファターゼ血症

小項目
c) 臨床症状
筋力低下、または骨痛
d) 骨密度
若年成人平均値(YAM)の 80%未満
e) 画像所見
骨シンチグラフィーでの肋軟骨などへの多発取り込み、または単純 X 線像でのLooser’s zone

1) 骨軟化症
大項目 2 つと小項目の 3 つをみたすもの
2) 骨軟化症の疑い
大項目 2 つと小項目の 2 つをみたすもの

除外すべき疾患
癌の多発骨転移、腎性骨異栄養症、原発性副甲状腺機能亢進症

**くる病として発症した症例は、くる病の診断指針に準じる。

○骨石灰化障害を惹起する薬剤使用例では、くる病、骨軟化症いずれにおいても、低リン血症、または低カルシウム血症の存在を除いて判断する。

福本誠二,ほか.日本内分泌学会雑誌 2015;91(Suppl):1-11より引用

くる病・骨軟化症の診断に必要な血液検査は、クリニックなどの近隣の医療機関で受けることができますので、くる病・骨軟化症を疑う場合は、まずかかりつけのクリニックや病院で相談しましょう。

検査の結果、高アルカリホスファターゼ血症や低リン血症がみられた場合は、こちらで紹介している「正しい診断のための相談シート(くる病骨軟化症)」を活用して、より専門的な医療機関の受診をお勧めします。

くる病・骨軟化症だとわかったら、さらに病因を鑑別します

くる病・骨軟化症だと診断されたら、病因(病気の原因)を鑑別する必要があります。

どの種類のくる病・骨軟化症なのか調べる上では、まず、血中のリン濃度(血清リン)を測定します。リンが低く、FGF23の値が30 pg/ml以上の場合はFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断され、それ以外の疾患と区別することが可能になります。

また、くる病・骨軟化症にはX染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症(XLH*)のように、遺伝性の病気もあります。鑑別診断の際には、家族歴(患者さんのご家族や親戚の病歴)も鑑別に重要な項目の一つになります。

* XLH:X-linked Hypophosphatemic Rickets/Osteomalaciaの略称

くる病・骨軟化症と遺伝

以下は、病因鑑別に用いられるフローチャートです。

病因鑑別フローチャート

福本誠二,ほか.日本内分泌学会雑誌 2015;91(Suppl):1-11より引用し一部改変

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の中でも後天性の腫瘍性骨軟化症(TIO*)は、FDG-PET/CTやソマトスタチン受容体シンチグラフィーによるFGF23産生腫瘍の場所の推定と、全身の複数の静脈からカテーテルを用いて採血し、局所のFGF23の濃度を調べて腫瘍の位置を特定する方法(FGF23全身静脈サンプリング(非保険検査))を組み合わせて、FGF23産生腫瘍の場所の確定を手術前に行います。

病因が判明した場合は、その病因に沿った治療が行われます。

* TIO:tumor-induced rickets/osteomalaciaの略称

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療方法

1)一般社団法人 日本小児内分泌学会HP|学会ガイドライン カルシウムとビタミンD関連疾患(2)ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き(最終閲覧日:2020年4月30日)
http://jspe.umin.jp/

2)一般社団法人 日本骨代謝学会HP|ガイドライン くる病・骨軟化症の診断マニュアル(2015年)(最終閲覧日:2020年4月30日)
http://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/ricketsmanual2015.pdf(PDFファイル)

この記事の監修ドクター

長谷川 行洋先生

長谷川 行洋先生

  • 東京都立小児総合医療センター 内分泌・代謝科 医師
  • 多摩北部医療センター 小児科 医師
伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部大学院医学系研究科 難治性骨疾患治療開発講座 特任准教授(研究室HP)
  • 東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター 副センター長

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